予防接種の重要性について

ワクチン接種は、大切なペットを病気から守るための「備え」です。ウイルスや細菌による伝染病は、見た目には健康そうに見える動物から感染することがあります。散歩中のすれ違い、他の動物との接触、さらには飼い主様の衣服や靴底を通じて室内に持ち込まれるケースもあり、「完全に防ぐ」ことは難しいのが現実です。
また、多くの伝染病には効果的な治療薬がなく、発症・重症化してから治療を始めても手遅れになるケースがあります。つまり、ペットの命を守るために最も重要なのは、「発症してから治す」のではなく、「発症させない」ことです。ワクチン接種によって免疫を身につけることで、感染しても発症しにくくなり、万が一発症した場合でも症状を軽く抑えることができます。痛みや不調を言葉で伝えられないペットだからこそ、飼い主様が先回りして守ってあげることが大切です。
最新のガイドラインに基づいた「体に優しい個別化プログラム」
このように極めて重要なワクチンですが、近年では世界小動物獣医師会(WSAVA)などの国際的な基準により、「すべての動物に、毎年一律で同じワクチンを打ち続けること」は見直され、個々の体や生活環境に合わせた最適なプログラムを設計すること(個別化)が推奨されています。
そのため当院では、ただ毎年機械的に注射を打つのではなく、以下の新しいアプローチをご提案しています。
コアワクチンの「抗体価検査」という選択肢
体の中に病気を防ぐ免疫力(抗体)がまだ十分に維持されているかを、簡単な血液検査で測定することができます。検査の結果、しっかりとした免疫が残っていることが確認された場合は、今年度の混合ワクチン接種を「不要(スキップ)」とし、不要な過剰接種を避ける選択が可能です。
ライフスタイルに合わせたお薬の選択(狂犬病と混合ワクチン)
ワクチンには、日本の法律で年1回の接種が義務づけられている「狂犬病ワクチン(犬のみ)」と、複数の怖い伝染病を予防する「混合ワクチン」があります。当院では、お散歩コースやドッグランの利用頻度、お住まいの環境などを丁寧にお伺いし、その子にとって真に必要な種類のワクチンや、抗体価検査を用いた「体に最も負担の少ない予防計画」を一緒に考え、大切な命を生涯にわたって守る大きな盾をつくります。
ワンちゃん・ネコちゃんの予防接種(混合ワクチン)
生後2ヶ月頃から始まる混合ワクチン接種は、ワンちゃん・ネコちゃん同士でうつる恐ろしい伝染病を予防するために行います。「室内飼いだから必要ない」ということは決してありません。衣服などを介した間接的な感染を防ぎ、大切なご家族の健康を確実に守りましょう。
犬の混合ワクチン
当院では、世界的に効果が極めて薄いとされるコロナウイルスワクチン(旧6種など)の接種は非推奨としており、ワンちゃんの生活環境(アウトドアに行くかなど)に合わせ、無駄のない「5種」「10種」「レプトスピラ単体4種」で優しく、かつ確実に予防します。
- 予防できる病気
- 5種
- 10種
- 4種
- 犬ジステンパー (コア)
- 〇
- 〇
- ー
- 犬伝染性肝炎 (コア)
- 〇
- 〇
- ー
- 犬伝染性咽頭気管炎 (コア)
- 〇
- 〇
- ー
- 犬パラインフルエンザ
- 〇
- 〇
- ー
- 犬パルボウイルス感染症 (コア)
- 〇
- 〇
- ー
- 犬コロナウイルス感染症
- ー
- 〇
- ー
- レプトスピラ・イクテモヘモラジー
- ー
- 〇
- 〇
- レプトスピラ・カニコーラ
- ー
- 〇
- 〇
- レプトスピラ・グリッポチフォーサ
- ー
- 〇
- 〇
- レプトスピラ・ポモナ
- ー
- 〇
- 〇
猫の混合ワクチン
ネコちゃんでは、お外に出るかどうかなどの「生活環境(リスクの度合い)」に合わせて、
無駄のない「3種」または「5種」のプログラムをご提案します。
- 予防できる病気
- 3種
- 5種
- 猫汎白血球減少症
- 〇
- 〇
- 猫ウイルス性鼻気管炎
- 〇
- 〇
- 猫カリシウイルス感染症
- 〇
- 〇
- 猫クラミジア感染症
- ー
- 〇
- 猫白血病ウイルス感染症
- ー
- 〇
ワクチンプログラム
子犬・子猫期に「複数回のくり返し接種」が必要な理由
生まれたばかりの赤ちゃんは、お母さんの初乳を通じて病気から身を守るための「移行抗体(母親からの免疫)」をもらいます。この移行抗体は非常に心強い味方ですが、「体内に残っている間は、ワクチンを打っても効果を邪魔して消してしまう」という特徴があります。
移行抗体が消える時期(生後6週〜16週頃)には個体差が大きいため、移行抗体が消えた「空白の期間(感染しやすい危険な時期)」をできるだけ作らず、かつ自力で確実に免疫を作らせるために、子犬・子猫期には生後16週齢(約4ヶ月)以降まで、3〜4週間おきに複数回繰り返して接種する必要があります。
ワンちゃんのワクチンプログラム
初期のワクチンシリーズ(生後2・3・4ヶ月の接種)が終わった後は、世界基準のガイドラインに基づいた「体への優しさ」を最優先にしたプログラムへと移行します。
【生後5〜6ヶ月頃】免疫ができているかの確認・追加
子犬期の最終ワクチンが終わった後、万が一免疫が十分に立ち上がっていなかった子を救い上げるため、世界的には「生後6カ月齢での追加接種(ブースター)」が推奨されています。当院では、ワンちゃんの体に余分な負担をかけないよう、2つの選択肢をご用意しています。
生後6カ月齢の時点で、追加の混合ワクチンを1回接種して免疫を確実に立ち上げます。
1ヶ月前倒しした生後5カ月齢の時点で血液検査を行い、すでに十分な免疫ができているかを調べます。しっかりと抗体があることが確認されれば、生後6カ月齢での追加注射は行わず、安全にスキップします。
【それ以降】愛犬の生活環境に合わせたオーダーメイド予防
当院では、科学的根拠に基づき、効果が極めて限定的なコロナウイルスワクチン(旧6種など)は採用していません。無駄のない「5種」「10種」、そして「レプトスピラ単体4種」を使い分け、個々のリスクに合わせた生涯設計を行います。
ドッグランや旅行、アウトドアなどの機会が少ないワンちゃんは、数年ごとに「抗体価検査」を行い、十分な免疫が維持されていれば、不要な混合ワクチン接種を回避することができます。
川や山、水辺に行く機会が多いワンちゃんは、ネズミなどを介して感染する重篤な「レプトスピラ症」の予防が不可欠です。このワクチンは持続期間が短いため、毎年1回の定期接種を推奨します。
※レプトスピラワクチンは初回2回接種が必要です。前回の接種から1年半以上あいてしまった場合は、免疫記憶を呼び戻すため、改めて「2〜4週間隔で2回」打ち直す必要があります。
ネコちゃんのワクチンプログラム
ネコちゃんのコアワクチン(猫パルボ、猫風邪など)は、血液中の抗体価と実際の感染防御能が必ずしも一致しないため、抗体価検査によるスキップは行わず、普段の生活環境における感染リスクの高さに応じてシンプルに予防間隔を切り分けます。
完全室内飼い(お家から出ない子)
感染を媒介する他の猫との接触がないため、生後1歳(または初期シリーズ完了の1年後)の追加接種を終えた後は、お体への負担を最小限に抑えるために「3年以上の間隔」をあけて優しく接種を継続します(3種混合を推奨)。
お外に出る子・多頭飼育環境
同居猫がお外に出る、ご自身がお外に出る、あるいは多くの猫ちゃんたちと暮らしている場合は、感染リスクが跳ね上がります。大切な愛猫を守るため、定期的な接種(毎年〜状況に応じた間隔)で確実に免疫を維持します(環境に合わせて3種または5種を選択)。
狂犬病ワクチン

狂犬病は飼い主様にも感染する伝染病で、発症するとほぼ確実に命を落とす非常に恐ろしい病気です。
日本では狂犬病の流行を防ぐため、飼い犬の登録と年1回のワクチン接種が狂犬病予防法によって義務づけられています。必ず毎年忘れずに接種しましょう。
フィラリア予防
フィラリア症は蚊を介して感染する病気です。感染するとフィラリアの虫体が血管を通じて心臓や肺動脈へ移行し、咳・倦怠感・失神などの症状を引き起こします。
最悪の場合、命を落とすこともある怖い病気ですが、予防薬を使えばほぼ確実に防ぐことができます。蚊の発生時期に合わせて、4月〜12月末までの予防をおすすめしています。当院では錠剤タイプの飲み薬のほか、おやつタイプ・背中に付けるスポットタイプ・年1回の注射薬など、ライフスタイルに合わせてお選びいただけます。
※毎年予防開始前に、フィラリア症に感染していないかを確認する血液検査が必要です。
ノミ・マダニ予防

ノミ・マダニが寄生すると、ワンちゃん・ネコちゃんにかゆみや皮膚炎、アレルギー症状、貧血などが現れます。また、ノミ・マダニはペットだけでなく飼い主様にも寄生することがあり、人への健康被害も深刻です。近年、ダニを媒介して感染する「重症熱性血小板減少症候群(SFTS)」の感染例が報告されています。
発熱・全身倦怠感・消化器症状などが現れ、重症化すると死亡するケースもある危険な感染症です。実際に国内でもSFTSによる死亡例が確認されています。大切なペットと飼い主様自身の健康を守るためにも、ノミ・マダニの定期的な予防をしっかり行いましょう。
よくあるご質問
子犬・子猫はいつからワクチンを接種できますか?
生後2ヶ月ごろから接種が可能です。はじめての接種はお早めにご来院ください。
混合ワクチンは毎年接種しなければいけませんか?
その子の年齢や生活環境、そして血液検査の結果に合わせて「オーダーメイド」で決めていきます。
ワンちゃんの場合
すべての犬が防ぐべき主要な病気(コアワクチン)は、毎年の血液検査(抗体価検査)で十分な免疫が残っていることが証明されれば、その年の接種をスキップすることができます。ただし、山や川へ行く子に必要な「レプトスピラ感染症」のワクチンは持続期間が短いため、毎年1回の追加接種が必要です。
ネコちゃんの場合
お外に出ない完全室内飼いの子は、初期の免疫が完成した後は、体への負担を減らすために「3年以上の間隔」をあけて優しく接種を継続します。お外に出る子や多頭飼育環境の子は、感染リスクが高いため「定期的(毎年〜状態に合わせた間隔)」な接種を推奨しています。
室内飼いでもワクチンは必要ですか?
はい、必要です。
感染力の非常に強いウイルスの中には、お散歩中の他のワンちゃんとのすれ違いや、飼い主様の衣服・靴底、来客などを介して、いつの間にか室内に持ち込まれてしまうケースが少なくありません。室内で暮らしているからといって感染リスクがゼロになるわけではないため、その子のライフスタイルに合わせた優しく確実な予防プランで守ってあげましょう。
福岡市でワンちゃん・ネコちゃんの予防接種・ワクチンをお探しの方へ

「室内飼いだから感染しない」「元気そうだから今年は注射はお休みでいいかな」
そう思っていても、恐ろしい感染症や目に見えない寄生虫のリスクは、私たちが気づかないうちにすぐ近くまでやってきていることがあります。言葉で不調や痛みを伝えられない大切なパートナーだからこそ、飼い主様が先回りして病気を「発症させない備え」をしてあげることが、何よりも確実で優しいウェルネスケアです。
福岡市東区・香椎駅前の福岡東動物病院では、ただ毎年一律で機械的にお注射を打つのではなく、世界基準のワクチネーションガイドラインに基づき、血液中の免疫の残り具合を調べる「抗体価検査」や、愛犬・愛猫の普段の暮らし(ドッグランに行く
か、完全室内飼いか等)に誠実に寄り添ったオーダーメイドな予防プログラムをご提案しています。
「できるだけ体に負担の少ない予防をしてあげたい」
「アレルギーやシニア期で毎年の注射に不安がある」
そのような飼い主様は、些細な疑問でも構いませんので、どうぞお気軽に当院までご相談ください。大切なご家族の健康な未来を、一緒に優しく守っていきましょう。

